いい大人がやってます

本日2本目。こちらはお笑いとは関係なく、意外なマニアの話です。

竹中直人 P.S.45』(フジテレビ)

いつもド深夜の3時台に放送されるメディアの苗床。スカパーのフジテレビ721/739やBSフジでやっている番組を紹介するのですが、今週はBSフジで放送中の竹中直人 P.S.45』。時間的にも金銭的にも余裕のあるオトナのライフスタイルを紹介する番組のようです。

レギュラー出演者は竹中直人さんと緋田康人さん(かつてビシバシステムというコンビを組み、現在は俳優として活躍中)。竹中さんが とある洋館のご主人、緋田さんがその執事という設定で、毎回ゲストを迎えてその人のお話を聞いたり、「余裕のある生活」を楽しむ方法をVTRで一緒に見たりします。

今回放送分のゲストは原田芳雄さん。一見、とっつきずらそうで、こわいイメージのある方ですが、実は鉄道マニア。中でも線路が好きなんだそうです。あのどこまでも伸びていく感じがたまらないのだとか。そういえば、いつだったか『笑っていいとも!』に出演されたときも、タモリさんと鉄道の話で盛り上がっていましたね。

子どもの頃からお父さんに連れられて電車を見に行っていたそうで、それが鉄道マニアへの第一歩。そして大人になってからは鉄道模型のレイアウト(模型車両を走らせるために作った、山や家、店などを含む風景模型のこと)作りに魅せられます。そのきっかけは ある映画の役柄。もともと興味を抱く資質は持ち合わせていた原田さんですが、「天井裏にレイアウトを作って模型車両を走らせる男」という役を演じたことで、一気にスイッチが入ってしまいます。

その凝り方たるや、話を聞いているだけでも尋常じゃありません。線路は自由につなげるイギリス製のものを使い、自分で手を加えて古い雰囲気を出します。風景は高い山を作ったり、海を作ったり、砂利を敷いたり、映画館や商店街、別荘地を作ったり。砂利は自分好みにするために、色を混ぜて使います。あるときは仕事仲間に敷地を割り当ててそれぞれに店を持たせ、宇崎竜童さんのタクシー会社、桃井かおりさんのマッサージ店、鈴木清純監督のケーキ店、松田優作さんの畳店が軒を並べるレイアウトにしたこともあるんだそう。だいぶ前の写真も出ていたけど、まだ若かりし頃の、今以上にハードボイルドなイメージの原田さんが黙々と山を作ったり、砂利を引いたりしている様子はギャップがありすぎて、ほほえましいぐらいでした(笑)。

以前読んだ『伊太利のコイビト』(松本葉・著/新潮文庫)という本では「マニア」と呼ばれる人のことについて、「素人を専門的知識で威圧するのはニセモノ、本物は自分が好きなものについて控えめに、でも熱く語る人である」、といったようなことが書いてありました。原田さんはまさに愛すべき本物のマニア。家族に嫌がられるほどのめりこんでしまう自分を「バカでしょ〜」と言いながら、秘めたる熱い思いを語る姿は、何でも8割程度で満足してしまう私には うらやましいぐらいでした。聞き手の竹中さんの「ええ〜っ」という声にも驚きとか尊敬とか憧れとか、そういう感情が混じっていたような気がします。

世の中には したり顔で自ら「マニア」と名乗ったり、興味深い話も揚げ足を取って終わらせてしまったりする人がいるけど、この番組は話し手と聞き手の絶妙な出会いというか、相乗効果というか、なんかそういう感じのものが見えて、すごく気持ちがよかったです。緋田さんの執事も出すぎず、引っ込みすぎずでいい感じでした。また見たいなあ〜。