これぞアドリブ“漫才”

一身上の都合により(笑)更新が滞っていましたが、今日からまた書いていきますので、お付き合いのほどを。というわけで、まずは今週の鶴の間から。

今回の笑福亭鶴瓶師匠の相方は、鶴瓶師匠30年来の知り合いでもある大木こだまひびきこだま師匠。これを知った時から私のテンションは上がりまくり。でも録画するし、裏番組で見たいものもあるし…と思いつつ番組オープニングの楽屋トークを見ていると、いきなりこだま師匠が「(この番組は)本格的な漫才が少ない。あれは漫才じゃない、ベタトークだ」と先制パンチ。完全にノックアウトされました。しびれました。後出しじゃんけんみたいでカッコ悪いんだけど、実は私もこの番組の「アドリブで“漫才”を披露する」といううたい文句には、ちょっと疑問を感じていました。常々、『笑っていいとも!』の放送後のお楽しみトークと大差ないような気がしていたんです。「漫才は“吸入・圧縮・爆発・排気”。今日はその真髄を見てもらう」と意気込み十分のこだま師匠。もうリアルタイムで見ないわけにはいかなくなりました。

鶴瓶師匠との「漫才」では、こだま師匠が大阪のおばちゃんのエピソードを紹介。漫才のつかみでは割と定番と思われるおばちゃんネタで、話を単なる昔話のトークではなく、漫才の方向に持って行きます。これに合わせて鶴瓶師匠が腹が立つおばちゃんの話やそそっかしいウェイトレスの話をすると、「それはそれでええやん」。いつもと勝手の違う展開に、鶴瓶師匠の表情は完全にひびき師匠。笑顔でありながら、困ったような顔つきです。普段なら相方は鶴瓶師匠の話に乗り、トークの様相を呈していくわけですが、こだま師匠はあえて合わせずに緊張感を持たせ、漫才らしいメリハリをつけます。

さらに、物忘れが激しいという話では「普通では考えられないことをする」というフリで「吸入」し、鶴瓶師匠が「ボールペンを探していたら、実は自分で手に持っていた」と言うと、得意の「そんな奴おれへんやろ」「圧縮」。さらに「そらチッチキチーや」とたたみかけて「爆発」させ、お客さんを笑わせて「排気」。バッチリ漫才の形で進め、主導権は常にこだま師匠。いつもなら笑わせるボケ役の鶴瓶師匠も、思うようにいかないために、必死に笑いを取りに行きます。笑いの相乗効果はその後も続き、鶴瓶師匠がこだま師匠に携帯電話での数字の入力の仕方や自宅の外灯の変え方を説明するくだりでは、身振り手振りを交え、いつになく大熱演する鶴瓶師匠が見られました。

最後まで漫才のスタイルを貫きたいこだま師匠は、舞台を後にする時にも「もうええわ」で終わらなければと鶴瓶師匠にリクエスト。一旦、チッチキチーで締めたつもりの鶴瓶師匠にもう一度漫才を続けさせます。関西人がよく使う「ほなな」という言葉がよく分からない、という鶴瓶師匠にこだま師匠が説明してやると、鶴瓶師匠が「ほなな」とソデの方へ。「“ほなな”ちゃうやん」と引きとめようとするものの、結局、2人のバトルは最後の最後で鶴瓶師匠に覆される格好になりました。

以前の記事で、若手も面白いけど、師匠クラスの方々の漫才は経験に裏打ちされたものがあるから一味違う面白さがあるんだろう、といったことを書きました。今回の『鶴の間』を見て、改めてベテランのすごさと凄みを感じました。面白かった。ビデオ保存決定。